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貿易条件の違いによるリスク ~前回に続き貿易条件ついて~

コラム 2020/09/10

輸送実態に応じた貿易条件を適用しないと大きな損失となることも...
貿易条件により保険金支払いが受けられない。というお話をいたします。

ケース①:FOB条件で輸入した冷凍食品

荷姿がカートン(段ボール箱)の生鮮魚介類をリーファーコンテナ(冷凍機が付いた保温コンテナ)で日本に輸入。 日本の港に到着した際にコンテナから貨物を取り出し、外観などのダメージを確認いたしますが、リーファーコンテナには問題が無いにもかかわらず、全カートン中30%ほどのカートンの表面に霜や薄い氷が付着していました。輸入者はその30%をダメージ品と断定。もともと生食用のため、一定温度のまま輸入する事が絶対に必要だったのですが、上記の損害状況は「どこか」で規定温度より高温となった事が想定されるため、菌の発生や品質の劣化が起きていると考えるのが「妥当」です。その貨物は加熱用食材として販売するか、廃棄するしかありません。いずれにせよ損害発生となります。日本で海上保険を手配しているため、保険求償を行い保険金を受け取る手筈だったのですが、このケースでは「FOB条件」のため保険求償が受けられなかった。

なぜか?…

このケースでは、シッパー倉庫を出荷後、規定温度を維持したまま輸送し港の倉庫(冷蔵倉庫)へ運ばれましたが、「トラックから港の倉庫へ入庫する際」「港の倉庫でリーファーコンテナへの積込み作業時」のいずれかにおいて、倉庫の出入口で数分の仮置きが発生し、その際に貨物温度が上昇したと思われます。ご存知のように、「FOB条件」は船舶へ貨物を積み込んだ時点から保険が有効になります。そのため、このケースでは保険求償が出来ませんでした。

 

ケース②:FOB条件で輸入したドラム缶入り粉末原料

荷姿がドラム缶の粉末原料をコンテナで日本に輸入。日本の港に到着した際にコンテナから貨物を取り出し、外観などのダメージを確認いたしますが、全量数十のドラム中、3ドラムに蓋が開けられた形跡(封印シールが剥がれていた)があり、その3ドラムの内容物がそれぞれ20%ほど減っていた。 オールリスク(ICC A)補償で保険手配しているため、保険会社へ求償を依頼したが「FOB」条件のため保険求償「不可」との返答。保険求償が受けられなかった。

なぜか?…

このケースでは、輸出港の倉庫に入庫された時点では封印シールは全て問題無い事が確認されておりました。おそらく、輸出港の倉庫搬入からコンテナへの積込みまでの間に封印シールが剥がされ、内容物の不足が発生したと思われます。ご存知のように、「FOB条件」は船舶へ貨物を積み込んだ時点から保険が有効になります。そのため、ケース①同様に保険求償が出来ませんでした。

もし違う貿易条件だったら…
貿易条件が「FCA」であれば、キャリアーへ引き渡した時点で保険が有効となるため、両ケースとも保険求償が可能だったと思われます。

 

現在の貿易条件は正しい運用となっておりますか?
思わぬトラブルとならない為にも、貿易条件は輸送実態に応じて正しく運用しましょう。


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