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輸入業者の賠償リスク その2 ~製品の不具合?輸送中の事故?~

コラム 2020/10/28

保険適用されない事故について。


輸入製品でクレーム発生の事例
輸入機械をメーカーに納品したA社(商社)に、納品後1ヵ月ほどしてB社(メーカー)からクレームが入りました。クレームの内容は機械の動作が不安定で、製造された製品の品質に問題があるとの事。営業担当がB社に赴き、機械の動作を確認したところ、回転動作する部分が肉眼でも分かるほど回転にムラがある事が判明。回転のムラは納入当初は無かったそうですが、使用を続けているうちに酷くなってきたため、機械の使用を中止したそうです。そういった状況を海外の機械メーカーへ報告したところ、直ぐに技術者を派遣するとの返答を得て、数日後に来日した技術者とA社の営業担当と一緒にB社で状況を再確認しました。


技術者の調査と見解
機械の状態を把握するために全体の寸法を採寸し、動作不良を起こしている部位を分解し調査したところ、機械全体(フレーム)に歪みが発生している事が分かりました。フレームの歪みが回転部分への圧力となり、使用を続けるに従い状態が悪化したと判明。結果として機械の不良ではなく、納品までの輸送で機械が強い衝撃を受けた事による、輸送事故が原因の可能性が高いと判断されました。


保険は適用されるか?
【海上保険】
保険会社に輸送関連の書類を提出し、サーベイヤー(検査員)が調査した結果、コンテナへの積み付け(ラッシング)が不十分だった可能性が高いとの判断がなされ、海上保険適用の対象外となってしまいました。
※コンテナ内の貨物固定が不十分な場合は海上保険が適用されません。
【PL保険】
保険会社へ連絡し状況を伝えましたが、機械メーカーの技術者の調査結果にて機械の不具合ではないとの判断が出ている事と、輸送事故の可能性が高いとの判断も出ているため、PL保険も適用されませんでした。


A社の賠償義務
①機械から精製される製品を販売する事により、本来B社が得られるはずだった利益
②正しく動作するよう機械の修理対応もしくは代替品の再納品。
この2つを保険ではなく自社負担で対応せざるを得ない結果となりました。

このケースの場合はコンテナ内の貨物固定に問題があったと思われます。
万全と思える保険加入であっても、事故状況により保険適用されないケースもございます。
A社としてはまだ、船会社への賠償請求と機械メーカーと交渉する道が残されておりますが

 

保険が正しく適用されるよう、輸送品質の高い業者を選定する事も大変重要です。
保険は万能ではありません。あらゆるリスクを想定する事が安定したビジネスに必要です。


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