貿易条件について ~物流の実態やビジネスに則した運用を~
コラム 2020/05/19
輸出入を行っている方なら理解されている「貿易条件」ですが...
貿易実態とは違う運用をされているケースが見受けられます。
ここでは、物流の実態やビジネスに則した貿易条件にしましょう!といったお話をいたします。
基本①:輸送用具によって正しく使い分ける。(輸送用具=船舶・航空機など)
日本からの輸出でも良く使われる「CIF条件」ですが、これは海上輸送(船舶)で使用するべき条件となります。航空機輸送でもこのCIF条件は良く使われておりますが、所有権や保険求償権(海上保険で保険金請求する権利)が「船舶に積込んだ時点」で輸入者に移転します。CIF条件では航空機の場合を想定しておりません。よって、航空機で輸送する場合は「CIP条件」とするべきです。CIP条件は「輸送手段問わず」ですので、船舶・航空機の両方で使用できます。また、キャリアー(運送人)に引渡した時点で所有権や保険求償権が輸入者に移転いたしますので、輸出者としてはリスクの手離れが早いのもメリットです。
基本②:DDP・DAP条件での輸出は要注意!
クーリエ(国際宅急便)輸送で良く見るD条件(DDP・DAPなど)ですが、CIF・CIPとは保険求償に大きな違いがあります。CIF・CIPの場合、輸出先で「貨物が破損した」際は輸入者が保険求償いたしますが、D条件の場合は「輸出者=日本側」が保険求償する必要があります。何故か?..これは、所有権の移転が「輸出先の指定地」と定義されているからです。つまり、輸出先の空港や港で貨物を卸した際に貨物破損が発覚した場合、所有権移転前に貨物破損が起きたとするのが「妥当」であり、所有権を有した輸出者にしか保険求償が出来ないからです。これらを理解・把握した上でD条件を使用するのであれば問題ありませんが、CIF・CIPと同じように日本から保険手配し、「事故発生時はそちら(輸入者)で保険求償してね」という感覚でいると、輸入者が保険求償できない事で輸入者と「大きなトラブル」になる事がありますし、時差のある海外相手に「輸出者が」英語で保険求償のやり取りを行わなければなりません。輸入側の通関費用も日本で負担するためにDDPとするなら、【貿易条件はCIF・CIPとし、通関費用込みで日本より輸送手配する】という決め事を契約書や覚書などに明記すれば良いのです。
基本③:貿易条件に囚われすぎない事。
ここまで基本①と②で、正しく、ビジネス実態に則した貿易条件の運用についてご案内いたしました。貿易条件は文化・風習・言語が違う海外と取引するための「ルール・規則」ではありますが、国際法ではありません。よって、輸出者と輸入者の双方が合意していれば、そのルールをカスタムしても良いのです。しかし、保険求償権の移転は貿易条件に従いますので、そこだけ注意していれば、貿易条件を柔軟に運用することも可能となります。
現在の貿易条件は正しい運用となっておりますか?
思わぬトラブルとならない為にも、貿易条件は正しく柔軟に運用しましょう。